自然の活用~竹林編|竹カゴを作る為の竹作り
自然の活用~竹林編|竹カゴを作る為の竹作り
本サイト自体は狩猟なのですが、私個人の本業はaboutにも記載しているように「竹細工職人」です。ブラック企業勤めで難病になって挫折を経験し、奇跡的に完治した後に脱サラして大分県の別府市にある職業訓練校を修了しました。現在は師匠の元でスタッフとしてお世話になっています。⇒ ojiro kakumonoten
普段は豆腐カゴ(角物)という四角いカゴを色々と作っています。他にも頼まれたり、展覧会に出品したりもしていました。これは先日友人にコタツ用のミカンカゴを頼まれて作ったモノです。
そんな竹を加工している人間なので、「もちろん竹は山から切って来るんでしょ?」とよく思われておりました…。竹細工職人は、作っているモノで大体3つ(青物・白物・黒物)に分かれます。
青物・・・切った竹をそのまま加工してザル・カゴをつくる職人
白物・・・油を抜いて天日にさらした写真のような白い竹で主にクラフトモノを作る職人
黒物・・・カゴを染色して、芸術性の高い花かごやアート系の作品を作る職人
ちなみに私は白物です。色々やってみましたが結局これが一番性に合っていました。そして青物職人を除いて、基本的に竹は竹材店から仕入れる(買う)のが一般的なのです。
私も歩けば玄関から最短10歩で竹が生えている田舎に住んでいますが、わざわざ隣町まで行って竹は買っていました。
なぜかと言うと、油抜きが面倒くさいから…です。青物職人は油を抜かずにそのまま作りますが、白物職人は油を抜いた竹を使います。
特に豆腐カゴ(角物)は火曲げが命と言われており、水分を多く含んだ竹は火曲げしてもカドがふんわりして丸くなり、しまりのないカゴに仕上がってしまう為、よく乾燥した白い竹は必須なのです。(白い竹の事を晒(さら)し竹と言います。)
個人でこの晒し竹を作るってのは結構大変で、設備や場所も必要になって来ます。
しかし、ここ最近では製竹業者が竹を売ってくれなくなって来ました…。近年、仕入れる竹が傷が多く半分くらいは傷で使えなかったり、充分に乾燥されてなくて買って来たのを自分で干したり。従来の職人達や、私のように訓練校を修了して自分でやって行こうとする若者達にも同じ供給状態なので、工夫して自分達でやろう!って人が増えて来ています。個人でやると大変なので、何人かで協力しあってやっているようです。
また、私の場合は、狩猟仲間からも
「こんなに腐る程竹が生えとるのに、よそから買ってこんで自分の竹ぐらい自分で切らんか!」と言われ、ごもっとも!!だと思い、もともとDIYが好きだったのも後押しして竹の倉庫や干場を作り、油抜きの設備も作ってあまり職人友達もいないので自分だけでやっています。
抜かない人もいるのに、なぜ竹の油(ロウ成分)を抜くのか?
そもそも、なぜ竹の油を抜く必要があるのか?という事なのですが、利点が3つ程あります。
・長期保存
竹は表皮という表側は油と言われるロウの成分で表面がコーティングされています。切られた後でも内側には水分が残っていますが、
コーティングされている性で水分が抜けず、内部から腐っていってしまってボロボロになってしまいます。
・綺麗になる
天日に晒された白い竹は表面に光沢がありピカピカしていて高級感があります。カゴにはアケビや山ぶどう、柳などの材料で編まれますが、自然の光沢があるのはこの晒し竹だけで、青い竹にはこの光沢は現れません。
・やられにくい
竹の天敵は虫食いとカビです。自然物なので仕方ない面はあるのですが、重要なのは竹の中に残っている水分と養分です。水上げしない時期に切られた竹を油抜きで煮込む事で、養分が外に出ます。また、天日に干すと内部の水分も減るので青い竹よりカビも発生しにくくはなります。
まぁ、一番の理由は高級感が出て高く売れるって所と材料としての保管が利くって所が主ですね。虫とカビは買ってくれたお客さんが使ってて嬉しい内容ですが、評判が良いとリピートもしてくれます。
竹の油を抜く方法は2種類
いつぐらい前からあるのかは分かりませんが、おじいちゃん世代では炭火で炙って磨いてたって話を聞きます。釣り竿を作ってたんだとか…。この方法は乾式という火で炙って出て来た汁を布で拭き取るという内容です。もう1つはアルカリ性にしたお湯で煮込んで表面に浮き出た油をふき取るという、湯抜きや湿式という方法です。
経験上、やってみてこの2つの違いなのですが、
・乾式(火抜き)
利点は、とにかく綺麗。光沢感がさらに上質で晒した色も湿式と比べるとさらに高級感がある欠点は、油抜きにとにかく時間がかかり4mの竹1本が1時間くらいかかる。切ってくる竹の選別が重要で、それに仕上がりが大きく左右され、水気に弱くて水シミが出来やすいです。干す時も夜露の心配をもする必要があって、とにかく気を使います。
・湿式(湯抜き)
利点は、一度に大量に油抜きできる。乾式に比べると養分が残りにくく、水気にも少し耐性があるように感じられる。欠点は、煮込む必要があるので、大きな水槽が必要となる。水槽の大きさによって、材料となる竹の長さが左右される。干す場合は乾式のように夜露まで気にする必要はないが、青みが抜け出したら雨の時は屋根のある所にしまう必要はあります。
どちらがいいのか?は好みだと思います。職業としてやるなら大量に作れる湿式でしょうね…。住んでる場所の環境にもよると思うので、ぼちぼちと少ない本数をやるだけなら乾式でも良いと思います。どちらもやってみて経験して自分に合っている方でやる方が良いと思います。
私としては、山に人が入らない事で起きる獣害問題や放置竹林などが前から一個人として問題意識があり、竹細工を生業とする以上は放ったらかしには出来ないと思っていました。一応、本業と狩猟は繋がっているのです。良い竹が安く買えるのなら問題なかったのですが、昨今の晒し竹の供給状況が頼りない上に、今後は悪くなっていくと思うので、これからも竹材作りは続けて行こうと思います。
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